第10教室:さすらいの青春(フランス語学習日記)

『さすらいの青春』を読みながらフランス語の学習をしましょう.ぜひご一緒に!

語学学習日記(フランス語学習) さすらいの青春(285)

 
𝓛𝓮 𝓖𝓻𝓪𝓷𝓭 𝓜𝓮𝓪𝓾𝓵𝓷𝓮𝓼
  
さすらいの青春(285)

 
—————————【285】——————————————

 Il  se  dit  aussi  qu'une  voiture  ne  se  perdait  pas
ainsi  et   que  quelqu'un  la  retrouverait  bien.   Enfin
il  revint  sur  ses  pas,  épuisé,  colère,  se  traînant  à  
peine.


———————————(訳)————————————————

 彼はまた、こうも考えた.馬車がこんな風に消えて無
くなることはない、誰かがちゃんと見つけてくれるだろ
うと.それで結局、モーヌは歩いて来た道を戻ったが、
体力も消耗し、怒りも込み上がり、かろうじて、足を引
きずりながらのことだった.


..——————————《語句》————————————————
       
se dit:(単純過去3単) <se dire    思う
     se dire que ~ :~だと心のうちで言う
     « Il faut y aller,  se disait-il. »   
     あそこに行かなくちゃ、と彼は考えた.
    [尚、dire は直説法3単もdit なので本文は物語現在
   とする読み方も可]          
se perdait:(半過去3単) <se perdre  ① 道に迷う; 
     ❷ 失われる、無くなる; ❸ 見えなくなる
   姿を消す、消え失せる.     
retrouverait:(過去未来3単) <retrouver  見つける、
   取り戻す、連れ戻す     
épuisé:(過去分詞) <épuiser (他) ❶ 使い尽くす、
      枯渇させる; ❷ 体力を枯渇させる
colère:(f) 怒り、立腹  
se traînant:(現在分詞) <se traîner (pr) ① 地面をはう、
   はいずり回る、 ❷ 苦しそうに歩く、
   いやいや行く、体を引きずって行く.  
à peine:かろうじて


.————————— ≪解釈≫ ———————————————

Enfin il revint sur ses pas, épuisé, colère, se traînant à peine.

文の屋台骨は il revint. (彼は戻ってきた).
revenir sur ses pas で「もと来た方へ引き返す」という熟語.
sur は「~に頼って」という前置詞で、モーヌのボロボロ
になった足を頼みにして戻ってきた、と言っています.
この骨格文に épuisé, colère, se traînant à peineがトッピング
されて、体力を使い果たし、(馬を持って行かれたかもしれ
ない)怒りもこみあげ、やっとのことで、足を引きずり
戻って来る、という修飾を施します.そうすると、訳は
「ついに彼は、体力を使い果たし、怒りを秘め、やっと
のことで、足に任せて戻ってきた」となります.
 colère は名詞なので、ポツンと一軒家のように、遊離
しています.ここでは「モーヌ=怒りそのもの」という
わけで、前置詞を介せず、「colère 怒りの権化然として」
ほどの意味解釈でいいと思います.文法的にはモーヌ
がcolère そのものだというわけで、Il était une colère. を
il revint.に放り込んで、il revint étant une colère. 
そしてil revint colère. となったと見ることができると
思います.仏文法のことはわからないのですが、英文法
では、これを外置構文(extra position) と呼んでいます.

それからひとこと:自分で書いておいて何ですが
Il était une colère.  男性主語が女性名詞の属詞をもつ、と
いうことはよくあります.

① クジラは哺乳類だ。
  La baleine est un mammifère.

② キリンは哺乳類である。
  La girafe est un mammifère.

①も②も、どちらの文も、主語が女性ですが属詞
(述語部分)が男性です!

赤ちゃん」という単語はbébé (ベベと読む)ですが、
これは男性名詞になります。なので、不定冠詞をつける
と、un bébé  なんですが、この赤ちゃん、女の子でも
un bébé で押し通します。何が何でも「un bébé 」。

とりあえず、生まれたときはまだ性別がわからない
ということで「un bébé 」。
これは納得できる。

    Un bébé vient de naître./ 赤ちゃんが生まれたところだ。
  Fille ou garçon ?  ——C'est une fille !
    女?男?       ——女だ!

しかし、二度目には男か女かは答えなくてはならない。
なぜなら、あそこを見れば、男か女かは、すぐわかる。
チョロロンが付いていれば男だ。

主語が男性名詞、同定部の述語が女性名詞という
不思議な文もできる。
Ce bébé est une petite fille./ その赤ん坊は女の子だ。 

  【結論】主語が男性名詞でその属詞が女性名詞にな
ることも、主語が女性名詞で、その属詞が男性名詞に
なることもある.
 なんだかスッキリしないのがフランス語である.
そういえば、昔のインドで「女は成仏できない」と舎
利弗に言われた竜女が成仏する瞬間、股間に男根が生
えたのだとか.男女差別思想のなごりが仏教経典に残っ
ているのですね.