第10教室:さすらいの青春(フランス語学習日記)

『さすらいの青春』を読みながらフランス語の学習をしましょう.ぜひご一緒に!

語学学習日記(フランス語学習) さすらいの青春(214)

 
𝓛𝓮 𝓖𝓻𝓪𝓷𝓭 𝓜𝓮𝓪𝓾𝓵𝓷𝓮𝓼
  
さすらいの青春(214)

 
———————【214】—————————————

 A  une heure et demie  de  l'après-midi,  sur  la route
de  Vierzon,   par  ce  temps  glacial,    Meaulnes  fit
marcher  sa  bête  bon train,  car  il  savait  n'être  pas 
en  avance. 


————————(訳)————————————————

  午後1時半、凍てつく中、ヴィエルゾン街道にモーヌは
馬を急ぎ走らせていた.なぜなら彼はもう早い時間ではな
いとわかっていたからだった.


————————⦅語句》———————————————
      
glacial:(形) 凍りつくような、
  Il fait un temps glacial. / 凍りつくような寒さだ.         
sur :(前) 方向、方角の意味もありますがここでは単に
     ~の上を、つまり、「ヴィエルゾン街道上を」          
la route de Vierzon:ヴィエルゾン街道
   サント・アガットからヴィエルゾンへ通ずる街道
   だろうと思います.
par:(前) [天候・時間]~の中を
   par ce temps glacial:この凍てつく中を       
bon train:速く、さっさと
   aller [marcher] bon train / 大急ぎで行く[歩く]    
en avance:(予定より) 早く、進んでいる


————————————————————————————————

以前に、その場面が来たら 私たちも、その場面になったら、
午後1時がいいのか、午後2時のままでよかったのか、判断
してみましょう.

と書きました.それがどのセクションだったか、朝から探して
いたところ、セクション101でみつけました.

セクション101をそのままコピペします.
皆さん方はどう思われるでしょうか、この30分後に
モーヌはヴィエルゾンへ馬車を走らせたというのですが…


———————過去記事コピペ—————————————————————————

【101】

             CHAPITRE Ⅳ


                      L' EVASION

                
A une heure * de l'après-midi,  le lendemain,  la classe
du  Cours supérieur  est claire,  au milieu  du paysage
gelé,  comme  une  barque sur l'Océan.  On n'y  sent *
pas  la  saumure  ni  le  cambouis,   comm  sur  un  
bateau  de  pêche,  mais  les  harengs  grillés  sur le
poêle  et la laine roussie de ceux qui,  en rentrant,  se
sont chauffés de trop près.


                    ——訳——

            第4章

                     脱走  

翌日、午後1時、上級クラスの授業は、凍りついた
景色の中、洋上の船のように晴れやかな時間である.
漁船で臭うような塩水のにおいも古い油のにおいも
しないが、ストーブの上で焼いたニシンの臭いや、
教室に戻ったので暖まろうとして近くによる生徒たち
の身に付けた毛糸の焦げたにおいがする.


                   《語句》   
évasion (f)    脱走、 逃亡
* a une heure  午後1時に
  下書き原稿では午後2時となっていたとのこと.
  ここは後に、妹のイザベル・リヴィエールの提
  言により「午後1時」に修正されたと言います.
  エミール=ポール版(1913年)を底本にし
  て訳されている邦文訳は、「午後2時」となっ
  ていると言います.尚、私たちが使っているの
  は、ファイヤール社1972年版です. 
       そこでいつものように訳本チェック.
  全5社の訳本をみたところ

午後1時で訳されている:    2社
午後2時で訳されている: 3社      

      なぜイザベルが午後1時に変更要請したかといえば、
  このあとの展開で、モーヌが午後1時半に馬車に
  乗っている姿が見られるというくだりがあって、
  つじつまが合わないから、という理由なのだそうです.

  私たちも、その場面になったら、午後1時がいいのか、
  午後2時のままでよかったのか、判断してみましょう.

clair(e) (形) 明るい、明るく澄んだ
  Par temps clair よく張れた日に      
gelé (e) (形) 凍った、氷に覆われた
   <geler (他) 凍らせる (自) 凍る     
paysage (m) 風景、景観      
saumure(f)[ソミュール] (塩漬け用の)塩水 
cambouis (m) [カンブウィ] 汚れた油(潤滑油の使用後の油)  
pêche (f) 魚釣り、漁、漁業      
☨ hareng (m) [アラン]  鰊(ニシン) (☨は有声のhの印)
grillés <griller [グリエ] (他) 金網で焼く、煎る
   pain grillé トースト
   griller du café コーヒーを煎る
   (自) 焼ける、こんがり焼ける
poêle (m) [ポワル] ストーブ
     poêle à gaz [ポワル ア ガズ] ガスストーブ    
roussi(e) (形) 焦げた <roussir (他) 赤褐色にする、焦がす        
laine (f) [レヌ] 羊毛、ウール、毛糸        
rentrant <rentrer (自) 帰る、帰宅する、戻る      
chauffés <chauffrer (他) 暖める、熱する
                 (自) 暖かくなる、熱くなる
    Elle fait chauffer de l'eau sur le réchaud.
    彼女はこんろで湯を沸かしている.
se chauffer (代動) 体を暖める、 ② (部屋を)暖房する


        ≪文法≫    (本文3行目後半から)
 * on n'y sent pas ~mais   と続いています.mais 以下には
動詞が見当たりませんが、sent が省略された形になっていま
す.つまり、
  On n'y  sent  pas  la  saumure  ni  le  cambouis,   
comm  sur  un  bateau  de  pêche,  mais (on y sent)
les  harengs  grillés  sur le  poêle  et la laine roussie
de ceux qui,  en rentrant,  se  sont chauffés de trop près.

ちょっと長いので comme のところをちょん切って
見てみましょう.

On n'y  sent  pas  la  saumure  ni  le  cambouis,   
mais (on y sent) les  harengs  grillés  sur le  poêle  
et la laine roussie  de ceux qui,  en rentrant,  se  sont
chauffés de trop près.

塩水の臭いも、グリスの臭いもしないが、魚(鰊)
の焼くにおいや、帰りに温まって行こうとする生徒
たちが、ストーブに寄りすぎて毛糸を焦がすにおい
がする.
* 尚、sent は sentir の現在形で書かれていますが、
勿論、過去について語る場面なので、訳す時には
過去形に変えても大丈夫です.ただし、試験では
忠実に現在形にしておいた方が無難です.採点者
の立場としては、sent は「におっている」sentait が
「におっていた」で処理しなければならないのです.
そこは採点者も、本当につらいところなのですよ.
と、以前ハローで知り合った人(採点経験者)が嘆
いていましたのでお伝えいたします.
(ずいぶん前の話なので今は知らないですが)

以上、裏事情をお伝えしました.