第10教室:さすらいの青春(フランス語学習日記)

『さすらいの青春』を読みながらフランス語の学習をしましょう.ぜひご一緒に!

語学学習日記(フランス語学習) さすらいの青春(204)

 
𝓛𝓮 𝓖𝓻𝓪𝓷𝓭 𝓜𝓮𝓪𝓾𝓵𝓷𝓮𝓼
  
さすらいの青春(204)

 
—————————【204】————————————————

Elle  était  sans  doute  infiniment  plus  belle  que  toutes 
celles  du pays,  plus  belle  que  Jeanne,  qu'on apercevait
dans le jardin des religieuses  par le trou  de la serrure; et
que Madeleine,  la fille du boulanger,  toute  rose  et  toute
blonde; et que Jenny,  la fille de la châtelaine,  qui était ad-
mirable,  mais folle et toujours enfermée.      


——————————(訳)—————————————————

おそらくこういうことだ:その女の子は、この地方のどの
子よりも、はるかに綺麗だったのだ.修道女たちの園を鍵穴
から、ちらっと覗いて見るあのジャンヌを凌ぐ美しさだった
のだ.あのパン屋の娘のマドレーヌは、バラ色の頬とブロン
ドの髪の色だけど、彼女よりも美しいのだ、お屋敷の娘ジェ
ニーよりも美しいのだ、ジェニーは美しいのだが、気が狂っ
ていて、いつもはお屋敷から出してもらえなかった.

 

..—————————⦅語句》—————————————————
            
infiniment:(副) ① 無限に、限りなく;② 非常に、おおいに   
Jeanne:(女性名)ジャーヌ、ジャンヌ;どちらの表記も多いです.
    ジャンヌでいきましょうか.尚、ジャンヌは未知の情報に
    なりますが「あの」と指示形容詞を付けておきます.
    ここでは語り手が「既知情報」扱いとして語っているよ
    うです.        
apercevait:(3単半過去) <apercevoir (他) ちらっと見る
religieuse:(f) 修道女          
trou:(m) 穴
serrure:(f) 錠; mettre la clef dans la serrure / 鍵を錠に入れる      
châtelaine:(f) ①城主の奥方、②大邸宅の女主人          
admirable:(形) 見事な、すばらしい、
folle:(形容詞女性形)<fou:①気違いの、②非常な、大変な
enfermé(e):閉じこもった  


————————— ≪感想≫ ———————————————

「彼女ははるかに美しかった」と直説法で言いきっているので
一瞬、事実だったのかと、びっくりしましたが、ここまで、こ
の物語を読んでいて、モーヌが女性と出会ったくだりはなかっ
たので、話者、フランソワの当て推量だとわかります.だが、そ
れにしても、直説法過去(半過去)を持って来るなら、ひとこと
「それはおそらく、こういうことだ」と行間は埋めてほしいと
思うのですが、ここも読者に行間を読ませるという手法を使っ
ています.訳文には、地文にない事柄を書き足すことになるの
で、(翻訳検定でもないかぎり)学校のテストで、こんな勝手な
書き足しはできません.
 私は仏文学を専攻したわけではありませんが、こういうテク
ニックは多いのだと思います.「行間を読者に渡す」というやり
方で、説明という、モタモタしたものを削ぎ落して、スーと流
れるような語り口調が生まれるようです.