第10教室:さすらいの青春(フランス語学習日記)

『さすらいの青春』を読みながらフランス語の学習をしましょう.ぜひご一緒に!

語学学習日記(フランス語学習) さすらいの青春(3)

さすらいの青春 (3)

 


————————————【3】————————————
    
Une longue maison rouge, avec cinq portes vitrées,
sous des vignes vierges, à l'extrémité du bourg ; une cour
immense avec préaux et buanderie, qui ouvrait en avant
sur le village par un grand portail ;
; sur le côté nort, la route où donnait une
petite grille et qui menait
vers La Gare, à trois kilomètres ;


————————————【訳】————————————
     
それは横長の赤い校舎で、5つのガラス窓があった。
校舎は蔦で覆われており、町はずれに建っていた。
校庭は雨天体操場と洗濯場もある広大な校庭で
また大きな校門によって、
先はずっと村の方向に開かれていた。
北側は3キロ先の駅に通じる道路があり、
そこに出るには、鉄格子の小さな
門を開いて出た。 


————————————【語彙】————————————

sous (前置詞) ~の下に
vitrées < vitré (a )窓ガラスの、ガラスのはまった (女性複数形)
portes < porte (f ) 扉、戸口、出入口
vierge (形容詞)  処女の、純潔の、真新しい、未使用の 未開拓の、
vigne (f ) ぶどうの木
ただし、vigne vierge で(装飾用の)蔦、野ブドウ
本文中では、複数形で使われているので、「あちこちに」という言外の意味がある。
尚、sous は~の下に、の意味ですが、ここでは、「蔦の下」と訳すより
蔦で覆われて(下になっている)いる、と考える方が、文の流れに即している。
未使用のブドウの木の下に校舎があるのではなく、校舎があちこち蔦でおおわれている。

bourg   町、市場町
l'extrémité < extrémité (f ) 端、先端、 境、はずれ
préaux < préau (m )(屋根のある)校庭、雨天体操場
buanderie (f ) 洗濯場
ouvrait < ouvrir (自動詞) 開く、 (sur に)面している 
en avant 前に、 先に
grille (f ) 鉄格子、鉄柵


————————————【解説】————————————

長文です。大学入試問題にピッタリのような。
さて、出だしは、どこにも動詞がなく、前置詞句の羅列です。
動詞を待っていたのでは、いつまでたっても、日本語に訳せませんから、
先回りして動詞を推測して、日本語を入れていきます。


「それは~」で始めて、「~あった。」と訳しましょう。
ゴタの訳はもっと、厚かましく「建っていた」としました。

どこにも、C'est なんかは、ないし、bâtir(建てる)という動詞もないのですが、
とりあえず、
何かそういう文の骨格がなければ、困るので、どこかそのうち、C'est が出てくるだろうと予測して訳します。たとえばお金がないのでカードでモノを買うように、

そういうことで、勝手にC'est とか、C'était bâti~をつけます。
そして、勝手にセミコロン ; のところで文を切ります。
フランス語の先生が見ていたら、泣いて家に帰ってしまいそう・・・

C'est une longue maison rouge, avec cinq portes vitrées,
sous des vignes vierges, à l'extrémité du bourg.

あとも勝手に C'est là c'était bâti みたいな処理をしておきます。
勝手に手術したので赤チンを塗っておくようなものです。
そのうち、無資格医療行為で逮捕される・・・

une cour 以下 も同様。qui で 文が修飾されていますが、とりあえず、

une cour immense avec préaux et buanderie

だけを訳します。同じく、どこにも C'était はありません。

「雨天体操場と洗濯場もある広大な校庭だった。」

これに qui 以下 の文をトッピングします。

qui ouvrait en avant sur le village par un grand portail ;

 (トッピングする文) + (ピザ生地の文) =

(大きな校門によって、先は村の方向に開かれた)+(広大な校庭だった。)


始めから見ますと、

Une longue maison rouge, avec cinq portes vitrées,
sous des vignes vierges, à l'extrémité du bourg ; une cour
immense avec préaux et buanderie, qui ouvrait en avant

sur le village par un grand portail ;

それは横長の赤い校舎で、5つのガラス窓があった。
校舎は蔦で覆われており、町はずれに建っていた。
校庭は雨天体操場と洗濯場もある広大な校庭で
また大きな校門によって、先はずっと村の方向に

開かれていた。

となります。

un grand portail

とありますので、大きな校門というより、「由緒歴史を感じさせるような」
立派な校門と訳す方がいいかもしれません。

一般に grand などの形容詞は、名詞の前に来ると、「偉大な」
という意味になり、名詞の後ろだと、 「大きな」という意味になります。

un grand homme  偉大な人間
un homme grand  大きな男

sur le côté nort, la route où donnait une petite grille et qui menait

vers La Gare, à trois kilomètres ;

donnait は donner(与える) の半過去形 

直訳すれば、 「小さな鉄格子(の門)を与える道路」
なのですが、道路があるから門が与えられているということで、ここは、

「道路に出るには、鉄格子の小さな門を開いた。」

となります。全体は

北側は3キロ先の駅に通じる道路があり、そこに出るには、鉄格子の小さな
門を開いて出た。 

au sud et par derrière, des champs, 以下はまた次回にしましょう。
今回はここまで。
ほなさいなら。


————————————【結論】————————————


文学作品は、文章が長い。16両編成の「のぞみ」と同じ。
あんまり長いときは、勝手にチョキンと切ってしまいましょう。

これを「庭師剪定の法則」という・・・

うそ、そんなこと聞いたことがない。

————————————【感想】————————————

「さすらいの青春」の出だしは、動詞がないので、
日本語訳をするのに工夫がいるかも。

なぜ、動詞が省略されているか?
それは、小説は、文章の羅列ではなく、文学だからでしょう。

芸術作品なのだから、格調を整える必要があるからですね。
「~しました。」「~でした」「~です。」と、
いちいちやっていたら、小学生の作文になってしまいますから。

プレバト(テレビ番組)が好きで、よく見ているんですが、
詩歌の世界の俳句では、物事を普通に述べたのでは
いい作品ができないのだとか。

仏文学の世界も、普通の文章に少し、動詞をはずしたりとか、
主語と動詞を倒置させたりとか、いろいろスパイスを効かせます。

コーヒーのように、香りとコクを

文に入れるには、引き算をして(動詞省略)リズムを生む。

ということじゃないでしょうか。
文法と相矛盾する、この文学という世界。
文学作品にも慣れていきましょ