𝓛𝓮 𝓖𝓻𝓪𝓷𝓭 𝓜𝓮𝓪𝓾𝓵𝓷𝓮𝓼
さすらいの青春(154)
—————————【154】———————————————
Toutes les têtes levées, toutes les plumes en l'air,
à regret nous le regardâmes partir, avec sa blouse
fripée dans le dos et ses souliers terreux.
——————————(訳)————————————————
クラス全員の顔が上った.ペンを持った手は宙ぶらりんだ.
惜しむように私たちは、背中がしわだらけになった青い上っ
張を着て泥だらけになった靴姿のグラン・モーヌが出て行く
のを見守った.
——————————⦅語句》————————————————
à regret:❶残念ながら、❷いやいやながら、
❸残念なことに(à mon regret)
fripé:(形) しわくちゃの、しわだらけの
soulier:(m) 短靴; 通例複数形で用いる
terreux(se):(形) ❶土の、土臭い; ❷土色の; ❸泥だらけの;
odeur terreuse / 土のにおい; chaussures terreuses / 泥靴
—————————— ≪文法≫—————————————————
toutes les têtes levées, toutes les plumes en l'air,
はぎれよく、分詞構文になっています.
étaient を補えば、意味は取りやすいと思いますが
文が野暮ったくなるので、こういう表現になって
いるのでしょう.
仏検で和訳の出題があれば、
「全員の顔が上り、ぺんが宙に浮かぶ中、彼は
背中がしわくちゃの青い上着、泥だらけの靴と
いういでたちで立ち去ったが、私たちはそれを
惜しむように見送ったのだった.」
この程度でなんとかおまけの合格ラインに食い込める
かと思います(が知らないぞ!)
ところで、いつものように、訳本はどうなっているかを
みてみましょう.
❶「講談社」:頭という頭が上がり、ペンというペンが
紙を離れ、モーヌが皺くちゃの上衣の背を見せ、
泥だらけの靴のまま出て行くうしろ姿を、私た
ちはがっかりして見送りました.
❷「みすず書房」:みんな頭を挙げてペンを持ったまま、私
たちは、彼が背中の皺くちゃになった上っ張りを
着て、泥だらけの靴を穿いて出て行くのを、残念
そうに見送った.
❸「角川文庫」:みんながペンを持つ手をとめて、顔をあげた.
そして、モーヌがぼろぼろになった服を背負って、
泥まみれの靴をはいたまま出て行くのを、しぶしぶ
見ていた.
❹「岩波文庫」:私たちは、いっせいに顔を上げ、ペンを宙に
止めて、モーヌが上着の背中をしわくちゃにしたまま、
泥だらけの靴で出て行くのを、残念な思いで見送った.
➎「旺文社文庫」:ぼくたちはみんな頭をあげ、ペンをもった手
を宙にもちあげたまま、モーヌが背中の破れた服を着、
土まみれの靴をはいて出て行くのを惜しそうに見つめた.
➏「パロル舎」:みんなが顔を上げた.ペンを宙に持ちあげた.
そして、ぼろぼろになった上着を背なかにひっかけ、泥
にまみれた靴を引きずって出ていくモーヌの姿を残念そ
うにながめた.